‪この街に雨が降り続けて沈んでしまえばいい。そうすれば大嫌いだった中学時代の思い出も魚の餌になって成仏してくれるかな。海底に落ちてきた僕の肉体を見て魚たちはどう思うだろう。きっとこんな醜い生き物が地上でのさばって生きているんだ、憐れだと悲哀するに違いない。見開いた眼球から僅かに漏れ出た小さな泡は海抜が上がるにつれて大きさを増し、地上に辿り着く頃にはこの世界を包む大きなオゾン層に成り代わっているだろう。僕は自分の寿命より長く持つレザーのジャケットに思いを馳せながら深い海の底で君がどうか無事でいるように願い、呼吸が止まったのを受け入れる。‬

理想の死に方

目が覚めるような赤いオープンカーの助手席には美しい女が座っている。俺はその女と談笑しながら山道を走っている。速度を下げるようにとの看板が目に飛び込んできたが、浮かれている俺はスピードを緩めず、むしろアクセルを思い切り踏み込んだ。気がつくと俺はコーナーを曲がりきれず、ガードレールも飛び越えて空中に放り出されていた。俺の肉体は高さ30メートル相応の位置エネルギーを持ってアスファルトに叩きつけられ、即死する。

‪駅を何度も通り越して走った。息が切れてもなお走り続けた。肺に流れ込む酸素は二酸化炭素となり空気に混ざり、大気を汚していく。ソールの減ったスニーカーはもう捨てた。目の奥で火花が散り、けたたましい音で鳴り響く遊園地の逆走するメリーゴーランドのように脳が揺れる。静脈に流し込んだ大量のコカインは全身の毛細血管を辿って隅々まで行き渡り俺の精神を覚醒させる。頭の中で足を止めるなと誰かが囁き続ける。俺は目にも留まらぬ速さで早朝の滑走路を駆け抜け、この世界で二番目に小さい星になった‬

生活

 

爆心地から少し離れた場所での一人暮らし。マンションは967階建て、私は384階の7%-0号室に住んでいる。じりじりと焦がす太陽光線は最上階の住人の頭の回路を焼いた。窓から見える二つの原子力発電所はとても大きく、女神の子宮のようである。近くを走る高速道路は何か異様な、巨大な生物の死骸のようでもあり、走る車はそれらを食い尽くす蝿のように忙しなく動く。

私は焼きあがったトーストにバターを塗り少し齧り見慣れた景色を改めて見つめながら、早くこの世界が終わればいいと心から願い退屈で尊大な一日を始める。

信号の色を無視して走った。才能が無かった俺は宛もなく夜の街を走るしかなかった。グランドピアノが頭蓋骨を砕く夢を見た。俺がこの世からいなくなっても世界が廻り続けることが憎かった。車を停めてうずくまるとなぜだか心地よく眠れた。重力と絡み合う思考の回路はアスファルトに落ち音もなく砕けた

 

脳に夏が溜まってきた。俺は手元にあったスパナで頭蓋を割ってそいつを出してやると炭酸の泡のようにはじけて消えてった。苦痛だが、またこうして来年も夏を処理しなくちゃならない。世界はたった一つの季節に支配されている