作用

 

誰かの恋人である誰かと恋に落ちる。誰かのために生きている僕は誰かと恋に落ちた時、生きている理由がほんの少しだけ明確になったように錯覚する。どこかの街の誰かである君は、ある日別の誰かと恋に落ちて僕のものではなく誰かのものへと移っていく。まるで季節が変わっていくように、呼吸をするように。誰かに歯止めをかけられるわけでもなく。僕は僕自身の不在を認識し、また別の誰かの中に自分の自分性を探し求めて毎日を過ごす。また誰かと恋に落ちて、誰かという存在から君という存在への変化を行ったり来たり何度も繰り返す。そうしているうちに気がつくと、自分は老いていることに気づく。死の足音が聞こえ始め、彼が扉をノックしたとき、僕は、ああ誰かのために生きるのではなく自分のために生きていればよかった、と後悔をして、絶命する。

誰も優しくなんかないから俺は

 

誰も優しくなんかないから俺は

 

夜は海と空の境界が曖昧になる

雨が振り続けてこの街が沈んでしまえばいい

世界が笑うとき お前は一人で泣く

死ぬときは皆一人

透明な神の意志が俺を無気力にしている

眠る街の息遣いに耳を傾けながら

不在

 

つぎはぎの毎日。光と重力という地球に君臨する力に抵抗できず、俺は地を這いながら毎日を埋める。塗りつぶしても塗りつぶしても奴らは次々とやってきて俺にねだる。ゴールは見えず、今走っているレーンが伸び続けるイメージが思考を通り過ぎる。どこからともなく沸いてくる笑い声の相手もしなくちゃならない。愛を持って考察しながら、時間と空間の奴隷としてのみ存在する俺は脱落することを許されない。いつから神は不在になったのだ

終わりの始まり

 

終わりの始まり

夏のような冬

眩しいほど明るい夜

感触のある夢

相対的な絶対価値

才能のない人間の生き様

電脳世界の思い出

やさしい安楽死

原因のない結果

目で見る音 聞こえる色

奇跡のような現実

ああ

また何かが始まる音が聞こえた

無題

 

僕が書く価値のない詩を読んでください。僕が死んだら泣いてください。その後は元から存在しなかったように全て忘れ去って、あなただけの新しい生活を始めてください。それではさようなら。電車に乗り遅れてしまわないように、くれぐれも身体にはお気をつけて。引き金を引いたらまたお会いしましょう。